この外来は、働くひと個人が、職業に伴う心身の疲労から回復し、ストレスのかかる状況で「自分で何とかする」スキル(レジリエンシー:逆境につぶされずにしなやかに生き抜く術)を高め、働き方のバージョンアップを図ることを支援する外来です。
過重労働や職場の対人関係などに伴うストレスが蓄積すると、徐々に心身が回復力が低下し、疲れやすい、気力がでない、睡眠が浅い、注意力や集中力が落ちる、物事を覚えているのが難しい、ミスが増えるといった状態になることがあります。こういった疲労状態は、通常はしばらく休むと回復するものの、時には、負荷が高まると容易に状態が逆戻りするようになることもあり、まるで自分が「へたった充電池」のように感じるようになった、と表現する人もいます。これがうつ病の始まりであることも珍しくありません。
私は医師として、ストレスにさらされた人が誰にも相談できないまま、暗中模索で様々な対処法を試し、もがいているうちに、心身の疲労がこじれて休職に追い込まれる、そういった事態になってしまう前に、早い段階で相談できる場が必要と考えました。
この外来では、仕事のストレス状況、ストレスへの対処法、睡眠、食事、運動などにつきお話を伺い、睡眠の改善、疲労・ストレス対処技法の向上、職務上の助言、運動を含む生活習慣の見直しなど、「非薬物療法」をまずは重視します。もちろん、甲状腺機能低下症やうつ病など、疲労を来しうる疾患が背後に隠れていることが疑われる場合、必要に応じて検査や薬物治療も行いますが、できるだけ薬物に頼らず、できるだけ少ない回数の通院で、ご本人がレジリエンシーを高めるスキルを身につけ、普段の生活に取り入れていただくことを目標とします。
まずは溜まった疲労を早く消化し、心身の回復を促しましょう。疲労を余分に背負い込まないための工夫を考えましょう。「悩みを断ち切る技術」を身につけましょう。コンディションを整えるための技術を磨き、ストレスに対し先手を打っておく生活をデザインしましょう。これまでの働き方を振り返り、「わたし」を取り戻し、これからの社会とどう関わって行きたいのかを考えてみましょう。